イワシ式

個人的なマンガの感想を細々と書くブログ

ひゅう、あんみつー♪(「ももんち」感想)

前回のエントリで挙げた「ディスコミュニケーション」はひたすら不思議な体験や変態的行為を通して「人はなぜ誰かを好きになるのか?」というテーマに迫っていく話だったが、雰囲気の真逆な恋愛ものを思い出したので読み返してみた。

ももんち (ビッグコミックススペシャル)

ももんち (ビッグコミックススペシャル)

 

冬目景作品はどれもすごく好きだけど、中でも一番好き。というよりも、1巻完結の短編で最後まできちんとまとまっているから読みやすい。「ももんち」(ビッグコミックスピリッツ。2006年から2009年まで不定期連載)。

 

美大向けの予備校に通う浪人生のももと、同じく予備校生の松本君を中心に、すごくピュアなストーリーが展開される。

それまで恋愛なんて全く無縁なももは、最初は予備校の臨時講師を好きになり、失恋し、その後ちょっと変わっているけど、どこか共通点のある松本君と知り合う。
ただの友達だよって周りには言うし、松本君も淡泊で本心がわからない。自分の気持ちに素直になれないまま、受験を迎え―。

 

青春だなぁ~ってカンジ。話も絵も、すごく優しくて、丁寧で、いつの間にか心も油断しちゃったところを、ぎゅ~っと握られるような揺さぶられるような。

ももはいつ、どこで好きになったかっていうより、ちょっとずつ引き込まれていく。
じゃあ「なぜ」好きになったのか?

自分自身そういう感度が非常に低いので、突然一目惚れするようなストーリーだったりすると全然ついていけなくなっちゃうけど、作者自身もあとがきにて「70~80年代の少女漫画を目指した」と書いているが、この作品は教科書的というか、ある意味非常にロジカルだと思う。

自分の気持ち、相手の気持ち、その理解できない「謎」が丁寧に展開されていく。

短編ということもあって余計な意地悪なキャラクターが出ず、登場人物みんな個性豊かだけど、いい人たちだらけ。ももの兄姉、親、友達(同級生の夏樹は「イエスタデイをうたって」からの出演!)。みんな優しいけど、このももだったら、そりゃあみんなに愛されるよなって思う。表題のセリフもそうだし、しゃくとりむしになってみたり、読んでいても放ってはおけない!
こういった人たちが、それぞれの立場から「謎」を解くヒントを出していく。

 

作品全体が冬目景タッチで描かれつつも、ストーリーがさわやかなこともあって万人にオススメできる。

 

ま、こういうのが一番「フィクション」だなぁとは思うけど。

そして「イエスタデイをうたって」はきちんと最終回までもっていけるのだろうか。。。

イエスタデイをうたって 1 (ヤングジャンプ・コミックスBJ)

イエスタデイをうたって 1 (ヤングジャンプ・コミックスBJ)