イワシ式

個人的なマンガの感想を細々と書くブログ

心ふるわす彼女のパーツ(「彼女のカーブ」感想)

2月は結局、ほとんど更新できんかった…。毎年この時期忙しいからあきらめてるけど。
さて、単行本出たら取り上げようと思っていた一冊、「彼女のカーブ」(ウラモトユウコ、エロティクス・エフvol.75~84(2012年~2013年)まで連載。全1巻)

エロエフ掲載作だが、例によって別にエロくはない。
表紙は手に取りづらい感じだけど、中身にそういう描写はない。

彼女のカーブ (F COMICS)

彼女のカーブ (F COMICS)




内容はオムニバスで以下の各話からなっている。

1. 桶屋さんのデコルテ
2. エレガのほくろ
3. 姉の薬指
4. 母のまつげ
5. 幽霊の二の腕
6. 先パイの耳たぶ
7. 兄嫁のつめ
8. キミの脚
9. ふたごのスキマ
10. 彼女のかたち
番外編 風吹ちゃんのおしり(描きおろし)

個人的には4, 8, 9, 10あたりがお気に入りかな。
女性の各パーツへのフェチズムのようにも見えるが、常に特定部位にこだわる話ではなく、むしろ不意にそのパーツが起点となり、はっとする瞬間を描いている。


好きになるというのは、違いがわかるということ。
いままで大して違いがわからなかったものが、突然輝いて見える。
好きになったから違いに気付くようになったのか、違いに気付いた瞬間に好きになったのか。

本作にあるのは「好き」だけではないが、ふとしたことで今まで意識してこなかった気持ちや感情に気付く。
気になるパーツから、そんな心が動く瞬間を描いている。


(4話「母のまつげ」より)

巻末の作者あとがきから引用。
『女の子はなべて可愛いなあと思いながら眺めています。
なんでこんなに可愛いんだろうとよくよく観察を続けると
可愛いを構成するパーツに
自意識とかコンプレックスとか友達とか恋人とか
図々しさとか自堕落とかいろいろな要素が
透けて見えてきて面白いです。』


単に目でパーツを見るのではない。
パーツに秘められた背景や想いを、心で感じる。
素敵なセンスだなと思う。


さて、ウラモトユウコ作の単行本としては「椿荘101号室」に続いて2作目となるが、絵柄というか、マンガの描き方も好き。

シンプルな線でスルスルっと描く。
自分でもなんとなくわかってきたけど、こういう絵の密度が好きなんだなと。

それと1コマずつの絵だけでなく、ページ全体の構図も巧い。
たとえば、10話の「彼女のカタチ」では、ちょっと凝ってる。

14Pの話で、オチもだいたいすぐにわかるのでネタバレを書いてしまうが、だいたい↓のようなあらすじ。

いつも違う女性を連れて歩く男性と、それを店から眺める花屋の女性。
彼女は窓越しに男性を見て片思いをしていたが、突然その男性が花屋に現れ、花を贈りたいと言う。
彼女は他の女へのプレゼントかとショックを受けつつも相手の女性の特徴を聞きながら、イメージに合わせて花束を作っていく。
ところが、実はその男性が想っていたのはまさにその花屋の女性だった、という話。


この話、男性の目線を追っていくと、常に彼女を見ていることに気付く。
コマの中ではふと目を横にやり考えていても、実は横のコマにいる彼女を見ている。

コマを超えて、ページをまたいで、視線の先にはいつも彼女がいる。
彼女を中心に、ぐるぐる回って、最後にパッと輝く。

言葉には出さずとも、「男性の想い人は花屋の女性」というのは一目瞭然。
まさにマンガならではの表現。お手本のような描き方だなと。


読むとちょっと他人を見る目が変わるかもしれない。気になる方は是非。

彼女のカーブ (F COMICS)

彼女のカーブ (F COMICS)

これ好きな人は↓もおススメ。

アラサーは悶々としてます!(「mon*mon」感想)

mon*mon (Fx COMICS)

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