イワシ式

個人的なマンガの感想を細々と書くブログ

超人 島耕作(「課長 島耕作」感想)

あけましておめでとうございます、というにはちょっと時間が経ちすぎた。さすがに一か月何も書かないとそのまま消滅しそうなんで一回ぐらい更新しとくかなと。今年最初ということで、歴史のある一作を。「課長 島耕作」(1983年よりモーニングにて連載)




タイトルは超有名でも今の若い世代で実際に読んだことのある人は少ないのではないのだろうか。
以下、ネタバレ多いので注意。

「課長 島耕作」(全17巻)に始まり、出世に応じて「部長 島耕作」(全13巻)、「取締役 島耕作」(全8巻)、「常務 島耕作」(全6巻)、「専務 島耕作」(全5巻)、「社長 島耕作」(全16巻)と続いていく。さらに、途中で過去編となる「ヤング 島耕作」(無印全4巻、主任編全4巻)、「係長 島耕作」(全4巻)、「学生 島耕作」(既刊1巻、連載中)なんかも描かれている。(ヤング、係長、学生はイブニングにて連載)

今はとうとう「会長 島耕作」(既刊3巻。連載中)となっているから、これが最終章となるのだろうか。それとも、この後は国会議員に出馬したり大臣になったりするのだろうか。もはや何が起きてもおかしくはない。

今のところ計81巻。去年Kindle版を全部買いそろえてしまった。。一冊540円として4万円超か。。


さて、話としては初芝電機に勤める島耕作なる男が「サラリーマンとは何ぞや」というのを体現していくストーリー。


この島耕作という男、とにかくモテる。


新人の頃からいきなり先輩に言い寄られ、その後も部下だろうが取引先だろうが飲み屋の女将だろうが外人だろうが芸能人だろうが、とにかく島に出会う女性はみな島を誘惑してくる。
その謎の力は本人にとどまらず、ブラジルに出張すれば秘書が飛行機でちょっと一緒になっただけの世界的サッカープレーヤーに一目惚れされたりする。


そうやって得た人脈で仕事の手柄をあげていく。というか周りが勝手に結果を出してくれる。


さらに、社内も取引先も不正が横行し、島は時に探偵を使ってそれを暴き、嫌な上司やライバルたちは自滅していく。それで島にプラス評価。


(「課長 島耕作」1巻より)


優秀な同期はフィリピンでテロリストに襲われ死亡。同じ車に乗るも島は右肩を撃たれるのみ。


どこにそんな遺伝子があったのか謎だが、隠し子は抜群の歌唱力を持ち、日本で歌手デビューした上にトップセールスをあげる。そして抜擢した島はその功績が評価される。用済みとなったところでその娘は事故で死亡。



まぁね、そりゃあ出世するよ。
これだけの強運があれば。



で、尊敬する上司が熾烈な派閥争いを乗り越えて社長に。
「これでいけるぞ!」と思わせて、実はその後も毎年赤字。


ついに島が社長になると、機転を利かした振る舞い、正義感溢れる行動から「さすが島社長!」という流れになるが、結局毎年赤字。でも何故か会長になる。


ギャグか。
といっても、現実にどの電機メーカーもそんなもんだったけど。


この漫画を読んで面白いのは、「昭和の大企業というのはどういうところだったのか」というのが学べるところ。
もちろん、漫画なので上に書いたようにエンターテイメント的なイベントが盛りだくさんだが、ところどころ当時の様子がうかがえる。


島耕作はいわゆる「団塊の世代」。
その世代はもう定年退職した人が大半だから、今会社に残っている人は少ないだろうが、役員ぐらいの世代はそういう人たちの部下として働いてきたのだろう。


いい悪いではなく、「当時はそういう考えだった」ということを知り、「今の上の方々はそういう時代を生きてきたのかもしれない」というのを想像しておくのはサラリーマンとしてひとつ大事なことではないか。


いくつか見てみると、


『離婚というのが昇進査定において少なからずマイナスになるということだ……
管理能力に問題ありということだよ
家庭の管理に失敗した人間はそういうことで評価されるということだ……』
(課長 島耕作7巻より)

そうか、、こりゃあ迂闊に結婚できないね。
かといって、結婚しない、子供もいないというのは「社会的な信頼がない」となる。大変だ。



『男と言うのはおまえ等女子供と違って毎日命をはって働いてんだ!!闘っているんだ!!たまに休みをとってゴルフに行くのが何故悪い!!』
(課長 島耕作12巻より)

昨年の都議会とか見てると今もこういう考えが抜けてない人が結構いるんじゃないかという気もしますね。


『あなたの子供4歳って言ったわね あなた自分が子供の頃4歳の記憶ある?
普通 殆どないわよね
だったら仕事を優先すべきじゃないの?あなたが会社の中で出世することは結果的には家族にその恩恵がまわってくるのよ』
(係長 島耕作4巻より)

これも上司がこういう時代で頑張ってきたとなると「お前が一生懸命働くことが家族の幸せにつながるんだ!」みたいに言われるポイントですね。要注意。


他にもいっぱいあるけどこの辺で。
自分の職場はユルユルだから、こういうのにぶちあたったらゲロ吐いちゃうよ……。今もこういう会社あるんかな?

「年寄りどもは何もわかってない!」と腹を立てるのではなく、彼らの時代や考え方を理解した上で上手く意見を通していくのが大事なんでしょうな。

ま、サラリーマンなら一度は読んでみてもいいんじゃないでしょうか。