イワシ式

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オジさんとはメンドクサイものと知れ(「スイーツ本部長 一ノ瀬櫂」感想)

4月も最初の週末となり、新入社員の方々はだいぶお疲れだろうか。
会社によっては、まだしばらく研修期間が続くかもしれない。

研修が終わり、部門に配属されると、いよいよ直属の上司とのご対面である。
この最初の上司は今後の社会人生活を決定づける重要な要素となる。

中には厄介なオジさんに当たることもある。
いや、むしろその可能性の方が高いと言っていい。

なぜオジさんたちはあんなにメンドクサイのか。


そんな、一人の面倒なオジさんのお話。
「スイーツ本部長」(佐々木善章、週刊モーニングにて連載中、既刊2巻)

スイーツ本部長 一ノ瀬櫂(1) (モーニング KC)

スイーツ本部長 一ノ瀬櫂(1) (モーニング KC)


↓で1~3話試し読み可能。
http://www.moae.jp/comic/sweetshonbuchoichinosekai/1/1





精密機器商社である外川無線電機に新しく東京本部長として就任した一ノ瀬櫂(47)が主人公。


(2巻、#22より)


この一ノ瀬、40代での本部長昇進は初であり、社内では相当な切れ者として通っている。
実際仕事はできるが、会社では誰も知らない一面がある。


それは、自宅で日々スイーツ作りに励んでいる「スイーツ男子(?)」であるということだ。


ただし、「美味しんぼ」や「神の雫」のように、スイーツを使って問題を解決するという話ではない。
ただひたすらに自分のためにスイーツを求める一之瀬の行動が、結果として全て仕事に好影響を与えるという流れ。

その話の強引さは「ヒナまつり」にも匹敵する。


きちんとお菓子作りのレシピも載っているし、正式なジャンルは何なのかわからないが、個人的には今熱いギャグ漫画として一押し。


さて、この一ノ瀬も学生の頃から独学でお菓子作りを学び、既に47歳であることから、世の中年と同様に相当こじらせている。


お菓子教室を覗き見し、勝手に上から目線の一ノ瀬。


(2巻、#20より)

『世の中には2種類の人間がいる
 お菓子を教わって作る人間と
 教わらないで作る人間だ』
『手とり足とり…ぬるいぬるい』


そう、オジさんは今まで数多の人生経験を積んでいるのである。
それがもう古代からの地層のように折り重なって、謎の自信やプライドとなり、若者を貶める。


(1巻、#06より)


でも、もう今更変われんのです。


仕事をはじめると、上司からはやたらと細かいことで注意される。


頑張って書類まとめて出したら、「ホッチキスの位置が揃ってない!」とかで中身も見ずに突き返されたり、「フォントが違う!」とか、「かっこは半角()じゃなくて全角()だ!」とか。



ホッチキスなんてどうでもいいじゃん!!
大事なのは中身だろ!!


って、思いましたよ。昔は。


そこまで形式的な話でなくても、一見どうでもよさそうな細かな点で「ここ、本当に大丈夫?」と何度も聞かれたりする。
かと思えば、自身のミスについては子どものような言い訳を展開したりする。


でも、自分も多少は社会人経験を積んできて、それらもそれなりに理由があるんだなと今なら思う。


その上司も若き日に、さらにその上司から同じところで注意されたんだろう。


あるいは、ホッチキスがきれいに揃ったときに初めて企画書が通ったのかもしれない。
かっこを半角にしてお客さんから怒られたのかもしれない。
同僚がふとしたミスで大きな損失をもたらしてしまったのかもしれない。
絶対に自分の過失を認めない先輩が出世していったのかもしれない。


そんな、数々の成功や失敗を乗り越えて上司に、オジさんになったのです。


特に新人の頃の経験は、たいしたことじゃなくても、自分の心にずっと残っている。
きっと自分も将来、若手たちにくだらないお説教するのだろう。


真面目な子ほど、小言を言われて「この上司は頭が悪い!」とか「クソッ!ムカつくわ!」と思ってしまうかもしれない。


ただ、その小言にはだいたいオジさんの歴史が詰まっている。


折を見て、どんな経験をしてきたのか聞いてみると、意外に面白い。
そして、案外同じような経験が自分にも降ってきたりする。



一般論と照らしたり、我を通そうとしたりすると、かえって自分のやりたいことから遠ざかる。
よく上司や先輩を観察し、個々の特徴を把握し、ツボをついていくと、不思議と自分の思う通りにコントロールできたりする。


メンドクサイことを言ってくるオジさんを「愛おしい」と思えたら、きっと仕事も上手く回っていくだろう。



新入社員は↓を一読することをおススメします。

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