イワシ式

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妄想ジェットコースター(「ひきだしにテラリウム」感想)

ショートショートってむずかしいな」

九井諒子の新作「ひきだしにテラリウム」(イースト・プレス)。今回は1話あたり2~10Pぐらいのショートショートが33編。大半はWeb文芸誌マトグロッソ」より。2012年12月で完結。

 

「竜の学校は山の上」も衝撃的だったけど、今回もテンプレなストーリーの裏側を描く感じで、妄想の世界が展開される。 33編全部面白いっていうよりも、人によって面白いと思う話は全然ばらばらになると思う。自分は「代理裁判」、「遠き理想郷」、「すごい飯」あたりかな。最近の「神の雫」なんてもはや全然ついていけないけど、そのうちむしろ「すごい飯」みたいな表現になってくるんじゃないかって気さえする。

他の作品にも共通しているけど、登場人物はあくまで真面目にそれぞれの世界を生きている。彼らには彼らの現実がある。で、"おわり"とくればその世界はそこで終わり。きれいにオチがついているのもあれば、ふわっと終わってしまったり。
別に善悪が示されるわけでない。たとえ自分たちの世界とは違っても、現実とはそういうもの。でも、暗い話であれ、真剣な彼らを見ていると何故か笑えてしまう。

まさにテラリウムのように、作られた世界を鑑賞して楽しむ。でも、ふっと彼らの世界の向こう側に自分たちの姿が見えて、そのときは笑いなのか感動なのか、なんだかよくわからん感じでぞわっとする。知ってたけど、知らなかった世界や言葉がボコボコと湧き上がる。

妄想って書いたけど、裏側を描くこの作者の、さらにその裏側は今度は表。そこにあるのは洗練された技法や理論。ロジックは突き詰めれば突き詰めるほどかえって妄想の世界につっこんでいく。

ちょっとひねくれた人にオススメしたい。

 

マトグロッソのページからいくつかお試しで見れるけど、これ先に読んじゃうと単行本読んだときの感動がちょっと減る。一駅一駅に味があるけど、予備知識なく始点から終点まで辿るのも一興かと。

 

 

もちろん前2作もすばらしい。どちらもKindleでも出てる。

 

竜の学校は山の上

竜の学校は山の上

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