イワシ式

個人的なマンガの感想を細々と書くブログ

秋は夕暮れ。(「ふら・ふろ」感想)

「オレンジの光が」「なんかあったかい感じがするんだよなー」

(ふら・ふろ3巻 p.81より)

 

ふら・ふろ (2) (まんがタイムKRコミックス)

ふら・ふろ (2) (まんがタイムKRコミックス)

 

ブログの第1回ということで何を書こうかなと思ったけど、自分の好みを表すものを。というわけで、もう連載終了しているけど「ふら・ふろ」(カネコマサル、まんがタイムきららキャラットH19/7月号~H22/6月号まで連載。全3巻)にしてみた。

キャラットに掲載されていたが、4コマではない。

ハイテンション・ボケ担当のハナと、ボーイッシュ・ツッコミ担当のナツという2人の貧乏系女子を中心にした日常モノ。貧乏とはいっても悲壮感とは無縁。基本ギャグだしね。

 



苺ましまろ」に似てるという指摘もあり、確かに、自分も第一印象はそう思った。ただ、何度も読んでいくと、その印象のズレが大きくなっていく。

 

違うのは、空気感…、季節感?

 

苺ましまろ」が春の暖かさとすれば、この「ふら・ふろ」は秋の涼しさ。たとえ気温が同じとしても、五感で感じるものは全く違う。

 

きらら系の他のマンガと同様に月刊日常系のため、もちろん季節ごとのネタが展開されるのだが、全体的にどこか哀愁や空気の透明感がある。冒頭のセリフは冬の回だが、非常にらしいと思う。 画像もあえてそれっぽい2巻にしてみた。表紙はどの巻も秀逸。
貧乏がテーマのひとつ(ちなみにふたりはアパートの管理人)ということもあるが、やはり出てくる人や風景の自然な振る舞いがそう感じさせるのか。決して読み手に対して狙っているわけではない。

 

「春はあけぼの」と言えば枕草子だが、明るくなってきて紫がかった雲がいいとかなんとか。
それに対して「秋は夕暮れ」である。烏が帰るところや、雁が列をなして飛ぶところに心ひかれるとしている。特に風の音や虫の声が最高だと。

 

自分はこの「秋」の感覚がすごく好きだと改めて思った。年とったってことか。派手さや華やかさではなく、かといって悲壮な場面でもなく、何気ない後ろ姿にこそ揺さぶられる。日々の、その場のノリで出てくる、言ってる本人にもよくわからない一言が、ワンテンポ遅れてツボを突いてくる。

何かが起こる話ではない。感覚が合わなければ、なんとも中途半端なマンガだろう。ただ、2人の日常にスッと寄り添うことができれば、わけもわからず笑えてくる。

こけしのみずにしたたるもいとをかしである。

 

個人的にはこれをきっかけにして、きらら系各紙を毎月買うようになった思い出のマンガ。連載中に1・2巻読んだら、どうしてもリアルタイムで読みたくなった。そこからなし崩し的に他も読むように。そのあと、すぐに連載は終わっちゃったけど、終わり方もらしかった。何も変わらず、ただ日常が続いて、「おわり」と一言。

 

こうでなければ。

 

ふら・ふろ (1) (まんがタイムKRコミックス)

ふら・ふろ (1) (まんがタイムKRコミックス)

ふら・ふろ (2) (まんがタイムKRコミックス)

ふら・ふろ (2) (まんがタイムKRコミックス)

ふら・ふろ (3) (まんがタイムKRコミックス)

ふら・ふろ (3) (まんがタイムKRコミックス)

 

ついでに。

枕草子 (まんがで読破)

枕草子 (まんがで読破)